後見の社にご相談をいただき、その改善を支援した事案のなかから、高齢者についた後見人による理不尽なケースを紹介します。
すべて、本人や家族、場合によっては後見人に著者も会って確認した案件です。
高齢者と接することの多い地域包括支援センターの職印やケアマネジャーの皆様、これでも法定後見制度の利用を勧めますか。老親のお金のことでもめているご家族の皆様、これでも親に後見人をつけますか。
「成年後見制度の落とし穴」著者 宮内康二 発行元 株式会社青志社
後見人のせいで晩年を一緒に暮らせなかったご夫婦
ケアマネさんから「ご主人についた後見人のことで悩んでいる奥さまがいる」と連絡を頂きました。早速ご自宅に行くと奥様から、
「区役所に後見制度を使うよう言われた」
「区役所から良い人がいると行政書士(女性)を紹介された」
「その人が後見人になって夫を劣悪な施設に入れた」
「あの施設じゃかわいそうだから夫婦で同じホームに入りたい」
と言われました。「老人ホームを探し、後見人に退所と入所の手続きをしてもらいましょう」ということになりました。奥さまはすでに心当たりの施設があったようで翌日、夫婦で入所できるよう仮手続きをしてきました。その流れで、奥さまが後見人に連絡したところ後見人から次のファックスが来ました。
ご主人の預貯金は8700万円です。
「新しい施設の費用は月40万円、後見費用が月5万円、予備費が月5万円、合計毎月50万円になります」
「このペースで100歳まで生きるとお金が足りなくなるので、その施設の手続きは致しません」
「このことで今後連絡してこないでください」
驚くべき内容です。会って話そうと、奥さまとケアマネさんと筆者で後見人の事務所へ行きました。不在だったので置手紙をしてきたところ、後見人から依頼を受けたという弁護士から「連絡してこないでください。連絡してきたら警察を呼びます」という内容証明郵便が奥さま宛てに届きました。奥さまは「あなたは事情を知ってこんな内容を書いてよこしたのか。事情はこういうことなのですよ」と弁護士に送り返すとその後何の連絡も来ませんでした。
その間に当初の後見人は辞めていました。何たる無責任かと思いつつ、時間が流れたので、新しい弁護士後見人にご主人の退所と二人で入所する手続きをするよう求めたところ、「就任したばかりで事情がよくわからない。せかせないでください。なぜそんなに急ぐのですか」というファックスがきました。
その直後、ご主人は、施設内のコロナ感染で亡くなってしまいました。
利己的な後見人のせいで、高校時代から一緒だった不府が最期を共に暮らせなかった現実は尋常ではありません。
「なぜ急ぐのか!私たちには時間がないのです」と奥さまは新しい後見人に手紙を送っていますが、残念ながらその通りの結果となってしまいました。
「二人とも、急速に、気力、体力が衰えています」
「一緒の暮らしが遠のくたびに落胆」
「晩年少しでも快適に過ごすための自己資金の利用」
と当然の心情が書き出されています。
この気持ちを不当に踏みにじった行政書士後見人及び弁護士後見人よ、お二人に時間を返せ!