日本における高齢者後見トラブル

後見の社にご相談をいただき、その改善を支援した事案のなかから、高齢者についた後見人による理不尽なケースを紹介します。
すべて、本人や家族、場合によっては後見人に著者も会って確認した案件です。
高齢者と接することの多い地域包括支援センターの職印やケアマネジャーの皆様、これでも法定後見制度の利用を勧めますか。老親のお金のことでもめているご家族の皆様、これでも親に後見人をつけますか。
「成年後見制度の落とし穴」著者 宮内康二 発行元 株式会社青志社

自分の家で暮らすという当たり前のことを妨害された高齢女性

「母のことで」と始まる相談を受けました。その方のお母さんは、20部屋のマンションのオーナーさんです。
同じマンションに住んでいる息子さんが定年退職したことから、息子さんがマンション管理をすることになったようですが、嫁いだお姉さんがそれをよしとしませんでした。ウソの理由でお母さんを連れ出し、そのまま遠くの施設に入れました。そしてお母さんに補助人をつける手続きをとり、知らない弁護士がお母さんの補助人になりました。
数か月後、お母さんの居場所がわかったので会いに行くと、「面会できません」と施設に断られました。それが半年ほど続いたころ「後見の杜」に相談が来たのです。現場主義・本人主義の筆者は、お母さんの気持ちを聞こうと一緒に行きましたが、「病院に行っていない」とのことで会うことができませんでした。
施設職員の態度や物言いが怪しかったので、作戦を立て直し、2回目に行ったときはお母さんと息子さんの再会を果たすことができました。息子さんを見るなり両手を広げる87歳のお母さんはとても嬉しそうで、ロビーで少し話すや、「今すぐ家に帰りたいとおっしゃり、息子さんの車で帰宅しました。」施設からの連絡を受けた補助人とお姉さんが警察を呼んだようで、警察がマンションに来ましたが、自分の家に帰っただけなので、すぐに警察は撤退しました。後日、施設へ行き介護記録を見ると、補助人弁護士が、「長男が来ても会わせないこと」、「長男が会いに来たら、体調が悪い、寝ている、風呂に入っている、病院へ行ったなどと言えばよい」、「万が一、話すことになったら施設の職員が必ず同席、マンションの話になったら面会終了」と施設に指示していたことがわかりました。
その補助人はマンション管理に不慣れだったようで、格安の管理会社に委託しました。おかげで、手入れの良さで好評だったマンションの、前庭は草ぼうぼう、1階のエントランスフロアの電気はついたり消えたりとお化け屋敷のようになってしまいました。
部屋を借りている人からエアコンの修繕依頼があっても対応が遅く、長年転出などなかったのに3家族が「とても残念だけど」と出て行ってしまいました。
補助人のせいで家賃収入が減ってしまったのです。
自分の不出来をオーナーに知られたくがないための「会わせない後見」、そのために施設に迷惑をかけた補助人弁護士の陰湿性に壁易します。救いだったのは、老人ホームから脱出できたお母さんが自分の部屋で晩年を暮らすことができたことで、「それだけは本当に良かった」とお母さんと長男家族が喜んでくれたことです。子供同士の軋轢があるとはいえ、自分の家で暮らすという当たり前が、悪質な補助人弁護士により妨害されたのです。

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