後見トラブル泣き寝入り、6つの後見対策

これまで紹介した高齢者および障害者の後見トラブルは、すべて法定後見の実話です。
後見人になるのに適当な家族がいるにも関わらず、被後見人の財産が1000万円程度以上あることなどを理由に、家庭裁判所から後見人として弁護士や司法書士を送られるのです。
後見人が被後見人のお金を使い込む横領は刑事事件として警察が捕まえてくれたり、返金を求める民事裁判ができますが、紹介したトラブルは違法性や損害の立証が難しく、ほとんどの場合泣き寝入りとなります。家庭裁判所に文句を言っても「後見人と話してください」で終わり、弁護士に相談しても「後見制度はそういうもの」と一蹴されます。
しかし、そんなことで本当に良いのでしょうか。成年後見制度を使っていようがいまいが、良識のある人々により、スイスの国民投票やアメリカのブリトニー解放運動が日本でも起きるのは自然でしょう。
2021年6月、“後見制度と家族の会”が発足しました。被後見人やその家族が集い、おかしいと思うことを伝え、わからないことを学びあうプラットフォームとして今後の活動が期待されます。
ここでは、成年後見制度を使って現実に困っている人に対し、誰もができる悪徳後見対策を6つ紹介します。参考にして頂き、積極的に現状を打開してください。
「成年後見制度の落とし穴」著者 宮内康二 発行元 株式会社青志社

2 後見人を追加する作戦

「こんな人に家族の後見人を任せておけない」と思う場合、「私も後見人にしてください」あるいは「この人を後見人に追加してください」と申し立てる手続きがあります。
この申し立てを受けた家庭裁判所は、その後見人候補者を追加するかしないかを決めなければいけません。面接を経て追加が認められれば、後見人は二人になります。弁護士だけだったところに親族が追加される場合が多いですが、それにより、弁護士後見人と親族後見人が同じ権限を持つことになる場合もありますし、どちらかが財産管理を担当し、どちらかが医療や介護の手配などを担当するなど役割が分かれる場合もありますが、それは家庭裁判所が決めます。後見人の追加の申し立てがあると、それまでの弁護士や司法書士後見人が辞めてしまうこともあります。
世界遺産で有名な富岡製紙工場がある群馬県富岡市は、市民向けの後見パンフレットに「後見の取り消し」や「後見人の追加」について紹介しています。
現存する制度を包み隠さず情報提供するという点で、多くの自治体にとって好例といえるでしょう。こんな良心的な自治体も存在しているのは、心強い限りです。

後見トラブル泣き寝入り、6つの後見対策

これまで紹介した高齢者および障害者の後見トラブルは、すべて法定後見の実話です。
後見人になるのに適当な家族がいるにも関わらず、被後見人の財産が1000万円程度以上あることなどを理由に、家庭裁判所から後見人として弁護士や司法書士を送られるのです。
後見人が被後見人のお金を使い込む横領は刑事事件として警察が捕まえてくれたり、返金を求める民事裁判ができますが、紹介したトラブルは違法性や損害の立証が難しく、ほとんどの場合泣き寝入りとなります。家庭裁判所に文句を言っても「後見人と話してください」で終わり、弁護士に相談しても「後見制度はそういうもの」と一蹴されます。
しかし、そんなことで本当に良いのでしょうか。成年後見制度を使っていようがいまいが、良識のある人々により、スイスの国民投票やアメリカのブリトニー解放運動が日本でも起きるのは自然でしょう。
2021年6月、“後見制度と家族の会”が発足しました。被後見人やその家族が集い、おかしいと思うことを伝え、わからないことを学びあうプラットフォームとして今後の活動が期待されます。
ここでは、成年後見制度を使って現実に困っている人に対し、誰もができる悪徳後見対策を6つ紹介します。参考にして頂き、積極的に現状を打開してください。
「成年後見制度の落とし穴」著者 宮内康二 発行元 株式会社青志社

1 後見制度を取りやめる「取り消し」の術

本人の状態が回復するか、任意後見が始ると、それまでの後見、保佐、補助は取り消されます。
回復により取り消す場合、後見なら保佐以下の診断書を添付し、「後見開始の審判の取消の申立書」を家庭裁判所に提出します。保佐なら補助以下の診断書を医師より入手し「補助開始の審判の取消の申立書」を家庭裁判所に提出します。
面接や鑑定を踏まえ、ほとんどの場合、それまでの後見、保佐、補助が取り消されます。
任意後見を始めることで後見、保佐、補助を取り消す場合、まず、任意後見契約を結ぶ必要があります。
被後見人が委任者となり任意後見契約をする場合、本人の実印を復活させなければいけません。実印を復活させるには、被後見人と後見人で自治体の窓口に一緒に行きますが、自分の仕事を失うのが嫌なのか、実印を作ることに協力しない後見人もいます。
任意後見契約書を作成する公証人の壁もあります。被後見人、被保佐人、被補助人が任意後見をする場合、例えば、保佐のままでよいのではないかなどと言って任意後見契約を拒む公証人がいたら、後見の杜までご連絡ください。

日本における障害者後見トラブル

成年後見制度は、お金持ちの高齢者のものと捉える人が多いのですが、成年後見制度の利用者の4割は65歳以下で、知的障害、精神障害、高次脳機能障害などを持つ方々が利用しています。障害者の後見をめぐる惨状は高齢者後見トラブル以上に酷く、その実態を見て、「障害を持つ子を天国に一緒に連れていきたい」と嘆く親御さんもいます。しかし、それもできないわけで、障害者に関する後見の現実に向き合い、現状を打開していくしかありません。
以下、「何とかしてほしい」と後見の杜に寄せられた実際に起こった事例を紹介します。
「成年後見制度の落とし穴」著者 宮内康二 発行元 株式会社青志社

成年後見制度に狂わされた家族の人生

東日本震災の様子をテレビで見て、「親だからといって成人になった娘の、例えば保険の請求ができるわけではないことを知り、知的発達症の娘の後見人にならないといけないと思った」というお母さんがいました。
娘さんのこととなると猪突猛進で、自分で裁判所へ行って手続を取り、34歳の一人娘の後見人になりました。
後見人になったものの、特に何かできるようになったことはなく、年1回、裁判所に娘さんの財産目録と収支を書いて出す面倒だけが増えました。当の娘さんは、朝8時25分に家を出て、歩いて自分が勤務するクッキー製造工場へ行って働き、決まって15時45分に帰ってくる生活を続けています。
そんなある日、裁判所から、「後見制度信託か後見監督人か追加の後見人をつける」という連絡があったようです。ご相談を受けたので自宅へ伺うと、娘さんのためにかなりの金額を貯めてきたようで、これを裁判所が問題としたのです。
不必要と思われる措置は一切不要ということで、「信託も監督も追加の後見人も要りません」と跳ね返したところ、34歳の娘の意見を聴くことなく裁判所は比較的若い弁護士を後見人に追加してきました。
この弁護士は本当にとんでもない輩で、「娘さんが、私の事務所に300万円もってきた。お母さんに取られてしまうから預かってほしいと頼まれた」というありもしない報告を裁判所にしていたというのです。
お母さんは、「そんなことができるなら後見なんていらないでしょ」と激高したところ、別の弁護士が監督人としてついてきて、「あの弁護士後見人の言動については私に免じて許してほしい」とファックスをお母さんに送ってきましたが、なにゆえ、見知らぬ弁護士監督人に免じてウソつきの若い弁護士の虚言を許さなければならないのでしょうか。娘名義のお金があるからいけないと考え、他例に従い、生活費を清算することにしました。
お母さんと一緒に生活費の清算資料を作り上げるまで2週間ほどかかりました。
清算資料を作る過程で、引っ込み思案な娘さんに社会性をつけさせようと、小さいときから小旅行にたくさん連れて行ったこと、小学校のころ公文の通わせたこと、電車通学となった特別支援学校に自力で通えるかどうか心配だったので1週間だけ一緒に行ったものの2週目から自力通学ができたことなどを伺いました。
ある水を飲み始めたら体が強くなったようで病院知らずになったこと、最近は化粧品に興味があるようで一人でドラッグストアに行き自分で好きなものを買って帰ってくること、歌を歌うのが好きなことなども伺いました。
お金については、20歳から34歳までの14年間の収入総額は2268万4812円、支出総額が3501万6274円、収支の差額はマイナス1233万1462円となりました。この差額がありながら娘さんの名義の口座には2千万円を超える預貯金がありました。
それは、収支マイナス分の1233万+現在の預貯金2千万=3233万円以上を親御さんが娘さんに立て替えて工面してきたのです。通常なら、「生活費、家賃、旅行代などは親として払ったから清算しない。貯金は子供のためだからそのままあげる」でよいのですが、後見制度を使う以上、この収入の範囲で生活するものと考え、親からのお金を回収しないと裁判所の良いようになってしまうのです。
その後、この件を担当する家庭裁判所支部の担当裁判官は、新たに弁護士を後見人に追加してきました。
新しい弁護士とまた闘わなければいけないのかと思ったのか、気丈なお母さんでしたが、持病もないのに路上で帰らぬ人になってしまったのです。ある火曜日に会い、また金曜日に会おうねと言って別れた私は、その間の木曜日に亡くなったという連絡を受け、途方に暮れるとともに後見人、監督人、裁判所に心底ムカつき、その感情は今なお持ち続けています。

後日、ご自宅へ伺いお母さんの日記を読ませていただきました。「後見制度はオレオレ詐欺みたい」、「若造後見人に、あなたのやったことは犯罪、旅行も水も無駄遣いだからやめろと言われた」、「このままじゃストレスで死んでしまうよ」という類の文言がノート3冊に書きなぐられていました。そして言葉の通り、本当に成年後見制度でお母さんは命を落としてしまったのだと思います。
障害を持つわが子の通帳を没収され、名義を書き換えられ、犯罪者呼ばわりされる親のストレスは私たちの想像をこえたと思います。
お母さんは、ビラを作って、成年後見制度のひどさを同じ障害者の親御さんに知ってもらうためのセミナーを開いていました。お母さんの悲痛な気持ちが表れている「成年後見制度に狂わされた人生」というチラシの文言の重さ、どうぞ感じ取ってください。
奥さま(お母さん)亡き後、80歳になるお父さんは娘さんと二人で暮らしています。慣れない味噌汁を作り始めたようですが、娘さんの口に合わないのか、汁だけ吸って具は食べてくれないようです。

日本における障害者後見トラブル

成年後見制度は、お金持ちの高齢者のものと捉える人が多いのですが、成年後見制度の利用者の4割は65歳以下で、知的障害、精神障害、高次脳機能障害などを持つ方々が利用しています。障害者の後見をめぐる惨状は高齢者後見トラブル以上に酷く、その実態を見て、「障害を持つ子を天国に一緒に連れていきたい」と嘆く親御さんもいます。しかし、それもできないわけで、障害者に関する後見の現実に向き合い、現状を打開していくしかありません。
以下、「何とかしてほしい」と後見の杜に寄せられた実際に起こった事例を紹介します。
「成年後見制度の落とし穴」著者 宮内康二 発行元 株式会社青志社

目が見えない弟さんの保佐人をしていたお姉さんからのメール

次のメール相談が飛び込んできました。
「今年2月に母が亡くなり、被保佐人に法定相続以上の分与をという裁判所の理念に乗っ取り相続を実行したところ、預貯金が高額になったという理由で監督人を選任されました。」その審判が下りる前に、私は両親が障害のある弟のために生涯をかけて築いてきた弟への財産を、その労苦を知っている私に引き続き守らせてほしいと訴えました。文書にするようにという事務官の指示にも従いました。それに対して何の反応もないまま、一方的に審判が下り、異議の申し立てを認めないとあります。
被保佐人の弟の所へも文書で、「監督人をつけるにあたり意見があれば申し述べよ」と通達がありました。が、それは期限のほんの数日前に届き、さらに驚くべきは、弟の障害は全盲であることを無視するかのように「文書で述べよ」というものでした。
ほんの数日後に期限が迫っているなか、入所先のグループホームの施設長が代筆して、簡易書留速達で「これまで通り、姉にすべて任せたい。監督人の選任は無用」という主旨の文面を送ったにも関わらず、裁判官からは無しのつぶてのまま結論付けられました。
両親の苦労や弟への思いが、この理不尽な制度に踏みつけられるのは耐え難く、金額の詳細は年間24万円ほどと大雑把な提示ですが、弟の老後までの年数を計ると、まさに老境に入るまでには、今回母から受けた金額相当が監督人である見ず知らずの弁護士に持って行かれる試算になるようです。
「耐えがたく、眠れない日々が続き只々辛く、この制度を勧められたとはいえ、受諾してしまったことを強く悔んでいます。どこにも相談する術もなく、藁にもすがる思いで、こちらの相談窓口にたどり着きました。何卒、助けてください。審判が下されて以来、毎日が苦しいです」。
要するに、目が見えないことで成年後見制度の補佐を使っていたところ(そもそもそれは間違った使い方ですが)、相続が発生し、被保佐人の財産が増えたことだけを理由に、家庭裁判所が監督人をつけてきたという骨子です。
監督人をつける手続きの過程においては、被保佐人の意見を聴かなければならないという法律があり、通常は面談をするのですが、文書で回答せよと全盲の被保佐人に文書で通達してきたのです。
お姉さんにして「ショックだった」という家庭裁判所の仕事ぶりが不適切であることは言うまでもなく、追って世の中から沙汰が下るでしょう。
相談メールを頂いてから3か月後、お姉さんから「ご指導に本当に感謝です!」とメールが来ました。施設やドクターの協力もあり、この間に、弟さんの保佐を取り消すことができたからです。もちろん監督人も何もなくなりました。
良かれと思って後見を使った人ほど後になって苦労します。そして、残念ながら事態を改善してくれる専門機関は皆無に等しいのが実情なのです。使うだけ使わせて、あとは知らないという運用や利用促進はダメでしょう。市町村は、申し立てや費用助成など、後見制度の運用に関わっていることから、都道府県が後見の苦情対応・事務支援機関を設置することが必須だと切望します。

日本における障害者後見トラブル

成年後見制度は、お金持ちの高齢者のものと捉える人が多いのですが、成年後見制度の利用者の4割は65歳以下で、知的障害、精神障害、高次脳機能障害などを持つ方々が利用しています。障害者の後見をめぐる惨状は高齢者後見トラブル以上に酷く、その実態を見て、「障害を持つ子を天国に一緒に連れていきたい」と嘆く親御さんもいます。しかし、それもできないわけで、障害者に関する後見の現実に向き合い、現状を打開していくしかありません。
以下、「何とかしてほしい」と後見の杜に寄せられた実際に起こった事例を紹介します。
「成年後見制度の落とし穴」著者 宮内康二 発行元 株式会社青志社

「耳が聞こえないだけで後見をつけるのはおかしい」と戦う家族

昭和17年生まれのTさんは耳が聞こえません。兄弟姉妹はなく両親も亡くなり、Tさんの世話をしてきたおばさんも高齢となったので親族会議を開き、Tさんを、耳が聞こえないを主とすることを売りに開所した兵庫県内の施設にお願いすることになりました。
3年が経ち、Tさんの実家がある広島県内にも耳が不自由な人を主とする施設ができたので、お礼とともに、それまでの施設に引っ越しのことを伝えるや、施設の顧問弁護士が立ちはだかり、「Tさんは渡さない。Tさんに後見人をつける!」と言い出しました。そしてほどなく、Tさんに後見人がつき、後見人と施設がタッグを組み、親族はTさんに会うことはできなくなりました。警察や弁護士に相談してもらちが明かず、在京テレビ局で放送してもらっても施設側の硬直的態度は変わりませんでした。
ご親族からご連絡を頂いたので一緒に施設に行ってみると、何の問題もなくTさんと会うことができました。Tさんが家に帰りたいというのでTさん家族は車で帰宅しました。翌日、施設職員と後見人が家に来て、「Tさんを返せ!」と1時間くらい叫び、呼び出しを推し続けました。
困った親族から電話を頂いたので、怒声や呼び出し音が電話越しに聞こえましたが、Tさんにその声や音は届かず、「少し我慢すれば帰るでしょう」と話しているうちに、施設職員と後見人は撤退しました。雪が降るなか、お疲れさまという感じです。

その後、弁護士後見人は、拉致されたということでTさんに代わって親族を訴えてきました。当のTさんはいつものように穏やかな表情で、テレビを見たり、お墓参りに行くなどの日常生活を満喫しており後見人が言う拉致や高速とは程遠い実態でした。体重も施設にいるころに比べ7キロ近く戻ってきましたが、空気を読むTさんは、「自分がここにいるとみんなが大変みたいだから嫌だけど施設に帰るよ」と表現し、半年間の地元生活を経て施設に戻って行きました。それから3年半が経ちましたが、いまだにTさんと親族を会わせません。
施設弁護士は、「Tさんから後見人をつける依頼を受けたから家庭裁判所に手続きを取った」と言っています。しかし、自分に後見人をつけて欲しいと依頼する知識や能力があるなら、そもそもTさんに後見など必要ないはずです。
Tさんが後見をどのような手話で表現したのか、書面で書いてお願いしたのかどうかも定かではありません。この点、施設弁護士に、Tさんから後見開始の申し立てを依頼されたことを示す資料を見せるように請求してもその資料は一向に提出されません。その資料があるならば見せてほしいと、親族が家庭裁判所に請求しても家庭裁判所はあるともないとも言わず、見せられない「非開示」と言うだけです。
裁判所が指定した鑑定医によればTさんは「保佐相当」でした。後見ほど悪くないという証拠が提出されているのだから法律上、後見を取り消さなければならないのに、家庭裁判所はTさんの後見を取り消しません。取り消すと困ることがあるのでしょうか。弁護士と裁判所のこのような関係がある限り成年後見制度の利用が増えるはずがありません。

日本における障害者後見トラブル

成年後見制度は、お金持ちの高齢者のものと捉える人が多いのですが、成年後見制度の利用者の4割は65歳以下で、知的障害、精神障害、高次脳機能障害などを持つ方々が利用しています。障害者の後見をめぐる惨状は高齢者後見トラブル以上に酷く、その実態を見て、「障害を持つ子を天国に一緒に連れていきたい」と嘆く親御さんもいます。しかし、それもできないわけで、障害者に関する後見の現実に向き合い、現状を打開していくしかありません。
以下、「何とかしてほしい」と後見の杜に寄せられた実際に起こった事例を紹介します。
「成年後見制度の落とし穴」著者 宮内康二 発行元 株式会社青志社

法定後見を使うしかないと言われたが任意後見ができた兄妹

64歳になるお兄さんには知的障害、精神障害、認知症があります。92歳になったお母さんから「これからはあなたがお兄さんの面倒をみなさい」と言われた妹さんは1年ほどかけ弁護士、司法書士、社会福祉士、自治体、社会福祉協議会、地域包括支援センター、家庭裁判所などに相談したようですが、一様に「障害があるので法定後見を使うしかない」といわれたそうです。お母さんに報告すると「それじゃあ、誰が、後見人になるかわからないからダメ」と言われたようで、妹さんから後見の杜に相談がありました。
後見の杜では、「今の本人を見る」を原則としているので、妹さんと落ち合いお兄さんを伺うと任意後見でいけそうな気がしました。妹さんとのコミュニケーションが取れているからです。公証人と調整し、結果的に兄妹で任意後見契約を結ぶことができました。
知的障害、精神障害、認知症があるからといって、本人を見ず、法定後見しかないと決めつけるのは偏見以外の何物でもありません。障害イコール法定後見を決めつけ、障がいの度合いによって後見か保坂か補助かなどと知ったかぶりをして対応し、事情を精査せず事務支援を始めてしまう人を見かけますが、これは明らかにミスリードです。そのような初動ミスが法定後見ならではの人事面、費用面、取り扱い面でのトラブルへつながるのです。本人を見ず、法定後見へ誘導する人を見つけたら後見の杜までご連絡ください。
事例に戻ります。任意後見契約に加え、お兄さんと妹さんで、銀行取引や施設契約の代理代行を頼み、頼まれる財産管理委任契約も結びました。いわゆる委任状の大きい版といえますが、これにより、明日からでも、裁判所に関係なく、お兄さんに代わって妹さんが銀行などに行ってお金を下ろし、施設への支払いを済ますことができるようになりました。さらに、お母さんがお兄さん名義で貯めてきた預貯金を解約し、お母さんの口座にそのお金を戻しました。
お兄さんの世話をする前提で、お母さんの遺産のほとんどを妹さんが引き継ぐ遺言も設定しました。これで、将来的に任意後見が始まったとしても、お兄さんに財産があまり行かなくなるので、任意後見監督人の報酬を減らすことができると同時に、より多くのお金をお兄さんのために使うことができるようになりました。
以上で、お母さんからの特命を受けた妹さんの業務設定は首尾よく完了し、安心したお母さん、妹さん、妹さんのご主人、主役であるお兄さんは、みんなで温泉旅行に行くと仰っていました。
1年かけて相談して回った弁護士、司法書士、社会福祉士、自治体、社会福祉協議会、地域包括支援センター、家庭裁判所の言うことにそのまま従っていたら、今ごろ、見ず知らずの弁護士がお兄さんの後見人となり、財布を抑えて、旅行代さえ「意味がない」とでも言って払わなかったことでしょう。相談する人で人生が真逆になることもあるのです。

日本における障害者後見トラブル

成年後見制度は、お金持ちの高齢者のものと捉える人が多いのですが、成年後見制度の利用者の4割は65歳以下で、知的障害、精神障害、高次脳機能障害などを持つ方々が利用しています。障害者の後見をめぐる惨状は高齢者後見トラブル以上に酷く、その実態を見て、「障害を持つ子を天国に一緒に連れていきたい」と嘆く親御さんもいます。しかし、それもできないわけで、障害者に関する後見の現実に向き合い、現状を打開していくしかありません。
以下、「何とかしてほしい」と後見の杜に寄せられた実際に起こった事例を紹介します。
「成年後見制度の落とし穴」著者 宮内康二 発行元 株式会社青志社

県立の施設から後見を使うよう言われたお母さんの苦悩

10代の時に交通事故で重傷を負い、県立の施設に30年ほど長年にわたって入所している方がいます。ある日、施設は入居者の親御さんや兄弟姉妹に対し、「成年後見制度を使っている方の契約更新はこれまで通り3年ごとですが、成年後見制度を使っていない人は1年ごとに契約を見直すことになりました」と連絡してきました。「急になぜ?」と思ったお母さんが施設に照会すると、成年後見制度利用促進法を受けた県の方針でこうなりましたとのことだったようです。施設の回答はその通りで、このように後見業界はあの手この手で後見の利用を増やそうと躍起になっているのが実情です。
仕方なく、後見制度の手続きを取り、お母さんが後見人になりました。
数か月後、家庭裁判所から、「監督人をつけます」という通知が来ました。このタイミングで後見の杜に連絡を頂き、お母さんと本人のお姉さんと会って話をしたところ、お母さんから「県の方針は息子のためにならない。どうして、国は息子のためにならないことばかりするのですか」と嘆きました。「弁護士や司法書士に仕事を回したいためだと思います」と言ったところ、「そうでしょう、私も家族もみんなそう思っているんです」と仰っていました。
その後、お姉さんを後見人に追加しましたが、それでも監督人がつきました。
呼ばれたお母さんとお姉さんは家庭裁判所に出向き「監督人をつけてもしてもらうことはないのだから、監督人から費用を請求されても絶対に支払いません」と裁判官と書記官に強く言ってきたようです。
お姉さんは呼び出し面談のために仕事を休んでおり、家庭裁判所がいかに無駄で迷惑な監督人の選任を強行しているかを物語る事案といえます。
お姉さんは、現在も家庭裁判所と闘っています。

日本における障害者後見トラブル

成年後見制度は、お金持ちの高齢者のものと捉える人が多いのですが、成年後見制度の利用者の4割は65歳以下で、知的障害、精神障害、高次脳機能障害などを持つ方々が利用しています。障害者の後見をめぐる惨状は高齢者後見トラブル以上に酷く、その実態を見て、「障害を持つ子を天国に一緒に連れていきたい」と嘆く親御さんもいます。しかし、それもできないわけで、障害者に関する後見の現実に向き合い、現状を打開していくしかありません。
以下、「何とかしてほしい」と後見の杜に寄せられた実際に起こった事例を紹介します。

「成年後見制度の落とし穴」著者 宮内康二 発行元 株式会社青志社

後見制度が本当に必要かどうかを見極める力

仕事中に11m(3階の高さ)から転落した息子さんは高次脳機能障害になりました。労働災害の裁判のため成年後見制度を使うことになり、札幌の弁護士が後見人になりましたが、労災分野が苦手だったようで裁判が始まりませんでした。そのまま札幌にいても仕方ないので、実家の神奈川に戻ることになったそうです。後見人も神奈川の弁護士に替わりましたが、その弁護士も労災が苦手だったようで、結局、労災に強い弁護士に裁判をお願いしました。
数年が経ち、ようやく裁判は終了し、1億円近いそれなりの賠償金を獲得しましたが、労災の弁護士費用と後見の弁護士費用が二重にとられ、「こんなことなら、私が後見人になって、労災を弁護士に頼めば後見人費用はかからず済んだ」とお母さんは振り返りますがその通りです。やみくもに弁護士なら大丈夫と思い込んでいる裁判所の人選ミスで、無駄な費用を出費することもあるのです。
もっといえば、自分で労災に強い弁護士に裁判を依頼すれば済んだ可能性もあります。それで2千万円くらい後見人に取られた後見報酬を抑えることができたのです。後見制度が本当に必要かどうかを見極める力をどうか皆さん持ってください。

日本における障害者後見トラブル

成年後見制度は、お金持ちの高齢者のものと捉える人が多いのですが、成年後見制度の利用者の4割は65歳以下で、知的障害、精神障害、高次脳機能障害などを持つ方々が利用しています。障害者の後見をめぐる惨状は高齢者後見トラブル以上に酷く、その実態を見て、「障害を持つ子を天国に一緒に連れていきたい」と嘆く親御さんもいます。しかし、それもできないわけで、障害者に関する後見の現実に向き合い、現状を打開していくしかありません。
以下、「何とかしてほしい」と後見の杜に寄せられた実際に起こった事例を紹介します。
「成年後見制度の落とし穴」著者 宮内康二 発行元 株式会社青志社

長男は重度知的障害、次男は軽度精神障害のお母さん

訪問入浴のヘルパーさんが自宅で長男の入浴介護をしていました。「ガシャーン」と大きな音がしたので駆けつけると長男がお風呂場で倒れていました。その場にいたヘルパーはこともあろうに素知らぬ様子で、お母さんが救急車を呼びました。診断の結果は腰骨3本の骨折。
ヘルパーの態度がひどかったので派遣元の介護事業所へ苦情を入れると、「だったら明日からいきません」と電話をきられたそうです。ひどいと感じたお母さんは、息子さんのために入っている保険会社に電話をし、弁護士さんを紹介してもらいました。
会ってみると、「わざとケガをさせたという傷害の立証は難しいけれど、一方的にサービスを打ち切ってきたことについては勝てると思います」と理解を示してくれたので一安心したそうです。「ただ、裁判してほしいとご長男から依頼を頂かないといけないので、お母さんが後見人になってお母さんが依頼してくれれば戦えます」とのことで、2週間ほどで裁判所に出す資料を書き上げ、弁護士事務所へ持参すると、「とても良く欠けています。これならお母さんが後見人になれる!」と太鼓判を押され、お母さんは裁判所へ書類を提出しました。
裁判所での面接を経て、裁判所から来た封筒を楽しみに開けると、後見人は、お母さんではなくその弁護士になっていました。「なんで?」と思い電話すると、「私の方にも手紙が来ています。裁判所が決めたことなので仕方ないです」とそっけなく言うのです。
「これが最初におかしいと思ったことだった」とお母さんは振り返ります。
裁判所に出した資料に弁護士のことは一切書いてないのに、なぜこの人が後見人になったのか釈然としない気持ちで事務所へ行くと、2回目のおかしいに遭遇します。後見人になった弁護士から、「考えたのですが裁判は辞めましょう。お母さんの気は晴れるかも知れないけど、先の長い息子さんにはむしろ不利益になります。地元の介護事業者とは長く付き合っていかないといけないから」と言われたからです。
だったら何のために後見を使ったのかとお母さんは思いました。“もはや信用できない”と他の弁護士や自治体の福祉課に相談したものの、「できることはない」、「後見人に任せるしかない」と八方ふさがりとなり、後見の杜にご連絡を頂きました。
工夫の結果、弁護士後見人は辞任し、お母さんと長男のいとこが後見人になりました。その後、いとこに事情ができ後見人を降りることになり、先々のことを考え、地元の市民後見NPO法人を後見人として追加し、現在はお母さんとNPO法人で長男の後見をしています。後見を外すことができれば良かったのですが、長男の状態からしてそれは無理で、次善の策として後見人を替えることのサポートをした次第です。
お母さんからお手紙を頂きました。お礼に後見の杜の活動にご協力いただけるというお言葉に甘えて、後見セミナーでお話し頂いたところ、「後見はころごり、弟には後見を使いません」と断言する姿が印象的でした。
お母さんが裁判所に出した書類に書いていない弁護士がなぜ後見人になったのでしょうか。
それは、裁判所の面談で、「誰かに後見のことで相談しましたか」と聞かれたお母さんが、相談した弁護士の名前を言ったからです。裁判所は、「関わっているようだけどこの案件の後見人やる?」と弁護士に打診し、その弁護士が「やります」と言ったから後見人になったのです。この点、「裁判所が決めたことなので仕方ないです」とお母さんに説明した弁護士の説明は不適切でした。
誠意があれば、「後見人はお母さんがやって、私は裁判を引き受けることになっているのから後見人にはなれない」とオファーを断ったでしょう。

日本における障害者後見トラブル

成年後見制度は、お金持ちの高齢者のものと捉える人が多いのですが、成年後見制度の利用者の4割は65歳以下で、知的障害、精神障害、高次脳機能障害などを持つ方々が利用しています。障害者の後見をめぐる惨状は高齢者後見トラブル以上に酷く、その実態を見て、「障害を持つ子を天国に一緒に連れていきたい」と嘆く親御さんもいます。しかし、それもできないわけで、障害者に関する後見の現実に向き合い、現状を打開していくしかありません。
以下、「何とかしてほしい」と後見の杜に寄せられた実際に起こった事例を紹介します。

「成年後見制度の落とし穴」著者 宮内康二 発行元 株式会社青志社

交通事故の賠償金をめぐり裁判所に一矢報いた
20代後半のとき、バイクに乗って事故に遭ってしまった弟さんがいます。
脳挫傷の後遺症で車椅子を使用することになり言葉を発することもできなくなりました。
お姉さんから、「父が弟の保佐人をやってきた。裁判所から指導されることもなくやってきたのに、監督人をつけるか弁護士等の資格を持つ保佐人を追加するかのどちらかを2週間以内に選んで答えろという手紙が来た。父は気が動転し夜も眠れません」と電話がありました。
早速、ご自宅へ行き、主役である弟さんに話しかけると通じている感じがしたので、「わかっているんじゃないですか?」と聞くと、「そうなんです、少し打つのは遅いけど携帯でやり取りできる」というので、ラインを通じてやり取りすると完璧に話が成立しました。
「これは外せる」と確信しましたが、保佐を外すには保佐ほど悪くないという診断書を医師からとり、家庭裁判所の面接調査と鑑定医による鑑定を経なければならず、数か月程度かかるので、目先の課題である監督人と追加保佐人を回避する策を講じました。
具体的には、弟さん名義で5500万円分の年金保険に入りました。お姉さんに3600万円の現金を預け毎月10万円ずつ弟さんに渡す信託の設定をしました。保佐人であるお父さんを除く家族と親族に110万円ずつ、これまでのお礼として渡しました。これにより1億円近かった弟さん名義の預貯金が数百万円になり、その旨、裁判所にお父さん保佐人が臨時報告したところ、監督人も追加の保佐人もつかないことになりました。
そもそも、監督人や追加の保佐人がつくのは、本人名義の預貯金が例えば1000万円以上ある場合なので、そのルールを逆手に取り、本人名義の預貯金をほかの形に付け替えることで減じ、無駄な監督人や追加保佐人を回避するのです。この際、お父さんが代理権を使って、保険を買ったり、信託を設定したり、贈与すると、「権利の濫用」と家庭裁判所に言われかねません。あくまで弟さん自身がそれらの取引を行い、お父さんはそれに同意するだけのスタイルを取るのがポイントになります。本人がしたのであれば、財産処分の自由という思想があるので家庭裁判所といえども、とやかく言えなくなるからです。
そして、本丸の保佐取り消しの手続きに入りました。結論からして、保佐が外れ裁判所からサヨナラすることができたのですが、そうなるまでに1年かかりました。というのも、「補佐を取り消したいから現在の弟の状態を診てほしい」とお姉さんが主治医に伝えたところ、「えっ?僕は書けないよ。裁判所から言われたら書かなくはないけど」と、言って診断を拒否し続けたからです。
他のドクターに頼んでも、「主治医がいるから掛けない」と断られ続けました。
お姉さんはあきらめかけましたが、「主治医のところへ一緒に行くからもう少しがんばろう。弟さんは保佐ほど悪くないのだから保佐を続けることはダメなんです」と言い、筆者も主治医のところへ行きました。
事情を説明し、主治医が診断書を「書くには書く」ことになりました。
知能検査を経て、ようやくできた診断書を見てビックリ。「判断不能」という結論だったからです。これでは保佐取り消しの手続きに乗せづらいので、さらに探したところ現実を正しく反映する診断書を書いてくれるドクターと出会うことができ、その資料をもとに保佐でないことを証明し、裁判所での本人面談を経て保佐が取り消されたというわけです。
相談の電話を頂いてから21か月、保佐そのものが始まってから15年、ようやく弟さんの状態に合わせた本来の形に落ち着くことができたのです。
保佐を始めたときの診断書を見ると保佐をつける必要はありませんでした。
しかし、事故直後はパニック状態ですから保険会社に言われるがままでも仕方ないでしょう。取り消しに際しても、正当なドクターに巡り逢うまでが本当に大変でした。測定方法の問題もありますが、接見も医者次第という側面は現実にあります。