日本における障害者後見トラブル

成年後見制度は、お金持ちの高齢者のものと捉える人が多いのですが、成年後見制度の利用者の4割は65歳以下で、知的障害、精神障害、高次脳機能障害などを持つ方々が利用しています。障害者の後見をめぐる惨状は高齢者後見トラブル以上に酷く、その実態を見て、「障害を持つ子を天国に一緒に連れていきたい」と嘆く親御さんもいます。しかし、それもできないわけで、障害者に関する後見の現実に向き合い、現状を打開していくしかありません。
以下、「何とかしてほしい」と後見の杜に寄せられた実際に起こった事例を紹介します。
「成年後見制度の落とし穴」著者 宮内康二 発行元 株式会社青志社

ダウン症のいとこのことを弁護士に「ペットみたい」と揶揄された

Aさんはダウン症で兄弟姉妹はいません。Aさんのお母さんが亡くなり、「私が死んだら息子を頼む」と頼まれていたおじさんがAさんの後見人になりました。
Aさんの両親は、かなりの現金と家賃収入の入るアパートを2棟残してなくなりました。裕福だったわけではなく、節約に節約を重ね、Aさんがお金に困らないよう築いた遺産です。
Aさんの相続による財産額が多かったせいか、弁護士の監督人もつきました。
その監督人が家に来たとき、初めての人に愛嬌を振りまくAさんを見て、「ペットみたい」と揶揄したそうです。Aさんの人となりに興味がないのか、親戚からの情報提供もたいがいに、「アパートを見せてください」と言い、車の後部座席からアパートを眺めては、「これは売れるな」などとつぶやきながらメモを取っていたそうです。
後日、「Aさんを秋田の施設に入れてください。区役所と裁判所との話はついています」と言い出しました。これまで一緒に住んできて何の問題もないのになぜ?と思いながらも監督人がそう言うのだからそうするより他ないのだろうと考えてしまい、おじさんは、Aさんの後見人として、見たこともない遠い施設への入所手続きを済ませました。移動の日、嫌がるAさんを無理やり押し込め北へ車を走らせ、「僕も乗せて帰って!」と必死なAさんを振り切り泣く泣く帰京したそうです。
それから2年を経て、やはりおかしいと考え、後見の杜へのご相談を頂きました。いろいろ工夫し、結果的に本人は帰京、現在は実家近くの施設で穏やかに暮らしています。
一連の出来事や都市のせいもあり、おじさんが後見人を辞めるのは認められましたが、いとこが後見人になることは認められず、代わりに、ペット発言の監督人がAさんの後見人に昇格しました。これが裁判所のやり方です。
後見人になるための面接でいとこは、それまでの監督人の不適切な言動に苦情を入れました。そのせいか面接担当の調査官レポートに、「後見人候補者は専門職後見人に対し批判的である。面接を受けてもその態度は変わらず、後見人としては不適と思われる」と明記されていました。
いとこをペット呼ばわりされた相談者は弁護士会に懲戒請求しましたが不問とされました。
そのような価値観がまかり通る組織に所属する人にわが子の後見人をやってもらいたい親御さんがいるでしょうか。
家庭裁判所もペット発言の事実を知りながらその人物を後見人や監督人に多用しています。ペット発言の弁護士は某弁護士会の成年後見委員会副委員長を努め、成年後見に関する書籍を執筆し、後見監督人や成年後見初任者研修を担当しています。なるほど、こんなことがまかり通るなら、弁護士の後見の質は、下がることはあっても上がることはないでしょう。
人として、人間として、もっと思いやりのある接し方を望みます。

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