裁判所が決定した弁護士後見人による使い込み横領事件

家族を差し置き弁護士を後見人にしたところ、護るはずの財産を使い込むという業務上横領事件が後を絶ちません。その一部を報道をもとに照会します。
「成年後見制度の落とし穴」著者 宮内康二 発行元 株式会社青志社

元九弁連理事長苦情41件 福岡弁護士会に「対応甘し」

福岡県弁護士会の古賀和孝会長(当時)は30日、成年後見監督人の立場を悪用し現金をだまし取ったとして詐欺罪で起訴された元九州弁護士連合会理事長の弁護士〇〇〇〇被告(66歳)について、2002年度以降「預けた現金を返してくれない」などの苦情が41件寄せらていたと発表した。福岡県では弁護士の不祥事が相次いでおり、「弁護士会の対応の甘さが被害を拡大させている」との批判が強まっている。
古賀会長(当時)によると、これまでの調査で、〇〇被告は、依頼者や成年後見を受けていた女性ら約10人から預かっていた約1億2千万円を着服していたことが判明。〇〇被告はこの日、福岡地裁小倉支部に自己破産を申し立てたという。負債総額は約2億円「債権者約60人」で、破産が確定すれば弁護士資格を失う。弁護士会には02年度以降、29人から延べ41件の苦情があり、預かり金に関するものは8件、03年度には7件の苦情が寄せられていたが、翌年は九弁連理事長を務めた。弁護士会は、〇〇被告に苦情内容を伝え、09年3月には業務を改善するような文書で通知していたが、翌年以降も5件の苦情が寄せられていたという。
福岡県で発覚した弁護士による詐欺や業務上横領、業務放置などの不祥事は昨年3月以降で5件目。このうち、依頼者から約4億6900万円を詐取し実刑が確定した元弁護士の事件でも、弁護士会に数多くの苦情や情報が寄せられていたが、弁護士は「背景が複雑」「本人が面談に応じない」などの理由で迅速に調査できず、結果的に多額の被害が発生した。弁護士会は調査委員会を設け、対応が適切だったのか調査している。
〇〇被告への対応について古賀会長(当時)は「苦情への対応が適切だったのか、調査委員会の調査結果も踏まえて検証したい」と説明。元弁護士による詐欺被害に遭った男性は「弁護士会は身内に甘く、厳しい対応を求めるのは無理だと思う」と批判した。(2012年12月1日付 西日本新聞朝刊)

裁判所が決定した弁護士後見人による使い込み横領事件

家族を差し置き弁護士を後見人にしたところ、護るはずの財産を使い込むという業務上横領事件が後を絶ちません。その一部を報道をもとに照会します。

「成年後見制度の落とし穴」著者 宮内康二 発行元 株式会社青志社

成年後見の弁護士が2億3457万円着服の疑い

熊本市の49歳の男性弁護士が財産を管理していた人の口座からおよそ8000万円を引き出し流用した疑いがあることがわかりました。弁護士は流用を認め「ほとんど競馬などに使った」と話しているということです。
これは、県弁護士会が記者会見を開き明らかにしました。不正流用の疑いがもたれているのは、熊本市西区にある〇〇法律事務所の〇〇〇〇弁護士(49歳)です。県弁護士会によりますと、〇〇弁護士は、家庭裁判所の選任を受け成年後見人として管理していた二人の預金口座から、おととし複数回にわたり合わせておよそ2930万円を不正に引き出したほか、別の口座からおよそ5300万円を流用した疑いがもたれています。家庭裁判所に対し成年後見人が年1回行う報告がなく、今回の問題が発覚したということです。
弁護士会の聞き取りに対し〇〇弁護士は事実を認め「ほとんど競馬などに使ってしまった」などと話しているということです。県弁護士会の原彰宏会長は「弁護士としてあるまじき行為により市民の皆様の信頼を大きく損ない誠に遺憾です」と話していました。(2022年2月28日 NHK)
弁護士による横領事件は止むことがありません。横領ありきで行かざるを得なくなったとして、日本弁護士連合会(日弁連)は、仲間が盗ってしまったしまったお金を返すための基金「依頼者見舞金制度」は2017年4月からスタートしています。ただ、見舞額の条件は1件500万円までとなっており、弁護士に返済能力が無ければ取られたお金が戻ることはありません。この点、同じく後見人として横領してしまった社会福祉協議会は全額返済を表明しています。返金という観点からすると弁護士会より社会福祉協議会に真の誠意を感じます。

10年ほど前、家庭裁判所が送り込んできた成年後見監督人の弁護士が、「家庭裁判所から、被後見人のお金を預かるよう言われたので私によこしなさい」と親族後見人(息子さん)をだまし、お金を預けさせ、自分で使い込んでいたという事件がありました。この監督人弁護士は九州弁護士会連合会の会長で、「貝の名誉職で忙しく、弁護士個人としての売上が立たなかったから、被後見人のお金を使い込んでしまった」と釈明していました。それならば弁護士会の会長職を辞めたらよかったのではないでしょうか。
事案の詳細は後述の報道2の通りですが、そのころ福岡県が主催する成年後見制度のイベントがあり、私が基調講演をしたと思うのですが、パネルディスカッションの打ち合わせで弁護士会事務局長から、「会長による横領事件のことは言わないでほしい」とお願いされました。「言われたくなければ横領させるな」と言いましたが、組織として今後の管理を強化するという彼の意向を踏まえ発言を控えた記憶があります。しかし、熊本事件のように今でも九州エリアの弁護士後見人による横領は終わりません。「あのとき、地域の皆さまにしっかり知らせるべきだった」と反省し次回一昔前の事案を紹介します。

いわゆる専門職後見人の一部の呆れた実態

「成年後見制度の落とし穴」著者 宮内康二 発行元 株式会社青志社

某公益社団法人により区民の信用を失った自治体

区役所が推薦した某公益社団法人の会員により、ひどい目に遭った女性とその仲間がいます。某公益社団法人の会員二人が、ある女性の成年後見人になりました。その女性は西の方から上京し、浅草界隈で小料理屋を営んでいました。
阪神タイガースのファンが多く集まるお店は、常連さんでいつもにぎやかだったそうです。
女性に少し変化が出てきたことを知り得た区役所は、成年後見人をつける手続きをしました。その後見人候補者として某公益社団法人の会員である司法書士二人の名前を載せ、区長の名前で家庭裁判所の後見枠に必要書類を提出しました。成年後見人となった二人は、女性の小料理屋を処分しました。女性の家を売り払い、女性が飼っていた猫を他人に預けその猫は1週間程度で死んでしまいました。
女性が入れられた老人ホームは、「ベットから落ちることを避けるため」と言い、冷たい床の上に段ボールを敷き女性はその上に寝ていました。病気のため飲んではいけない薬があるのに、お構いなしに飲まされてもいました。後見人が現場を見ず説明もしていなかったのでしょう。
変わり果てた女将の惨状を見ていたたまれなくなった常連客が、司法書士に文句を言っても、一人は連絡が取れず、一人は、「二人でやっているから何とも言えない」という意味不明な発言を繰り返しました。たまりかねた女性が司法書士事務所へ行き、「誰に、いくらでマンションを売ったのか。どうして店を勝手に閉じたのか」と聞いても司法書士は回答しません。
私はその場に同席しましたが、その司法書士が後見ビギナーとはいえ、後見の本質を理解しておらず、某公益社団法人の研修の質の低さを再確認した次第です。その後、司法書士二人は、女性をどこかの施設に移しました。常連客が聞いても居場所を教えないので、常連客はある手法を用い女性の居場所を突き止めました。私もその施設へ行き「○○さんいますよねと言うと、施設長は、「いるかいないかも答えられない」と顔を引きつらせながら言いましたが、その表情からして「ここにいます」と言っているようなものでした。
施設長は警察を呼びましたが、2時間くらいして「皆さんの気持ちに根負けしました。〇〇さんはここにいます。」と暴露しました。後見人からいろいろ頼まれたようですが施設もいい迷惑だったことでしょう。

いわゆる専門職後見人の一部の呆れた実態

「成年後見制度の落とし穴」著者 宮内康二 発行元 株式会社青志社

仲間内で後見ビジネスの取り合い

同じ司法書士でも某公益社団法人の会員か非会員かで区別をつけたいようです。
某公益社団法人は、家庭裁判所に、「某公益社団法人の会員ではない司法書士に後見の仕事を出さないよう」陳謝しています。2022年3月現在、司法書士は2万2千名程度、その3割強が某公益社団法人の会員となっています。逆に言えば、7割弱は某公益社団法人に入っていません。少数派なのに、あるいは、少数派だから多数派を寄せ付けたくないのかもしれません。
後見の仕事は某公益社団法人に入っていなくてもできます。実際、某公益社団法人ぼ会員ではない司法書士に、後見の仕事を頼む人もいますし、後見の仕事を出す家庭裁判所もあります。そして、非某公益社団法人の司法書士はきちんと仕事ができています。
某公益社団法人に入るメリットは、家庭裁判所に提出する後見人候補者名簿や監督人候補者名簿に名前が載ることです。それにより、持っていれば、家庭裁判所から連絡があり、仕事を受けられる点です。その代わり、会費とは別に被後見人から頂いた報酬の5%を治めなければいけません。

いわゆる専門職後見人の一部の呆れた実態

「成年後見制度の落とし穴」著者 宮内康二 発行元 株式会社青志社

グループホームから出入り禁止にされた司法書士

グループホームの経営者から、「司法書士の後見人が、入居さんを、別の施設に移すと言ってきた」と連絡がありました。グループホームへ伺い司法書士からの手紙を見ると、確かに、「Aさん(被後見人)、Bさん(被保佐人)、Cさん(被補助人)を別の施設に移すことになったのでよろしく」という趣旨が書いてあります。当の本人やご家族の意向を聞いてみると、「何のことだかさっぱり」と拍子抜けの様子でした。「ここにいちゃいけないの?出ていかなきゃいけないの?私、なにかしたかしら?」と不安になられた方もあり気の毒に思いましたが、ことらで明るく対応しすぐに懸念を払しょくしました。
本人に無断で不必要な転所をさせることは、認知症高齢者の引っ越しは何かと良くないという研究成果に照らしても本人にとってストレスになります。グループホームの経営陣は、その司法書士後見人から入居者を守ることを決定し、グループホームの出入りを禁止しました。移転先の施設とその司法書士の不適切な関係に基づく転所であろうことは想像に難なく、入居者を不安にする人物は後見業界から去った方がいいと思います。

いわゆる専門職後見人の一部の呆れた実態

「成年後見制度の落とし穴」著者 宮内康二 発行元 株式会社青志社

未成年後見に消極的な某公益社団法人の理由

某公益社団法人はお金になる成年後見にしか興味がなかったようです。
つまり、お金にならないことが多い未成年後見に消極的なのです。
大震災で両親を亡くした未成年者は少なからずいます。その子たちは、両親の生命保険金を受け取る権利はあっても、保険金を請求する能力がありません。
請求がないと保険会社は支払いません。受け取っても、未成年の場合、保険金を管理する能力がないとされます。5歳であれば銀行口座さえないでしょう。
銀行口座を作るにも親の関与が必要ですが、親権者がいない未成年は口座すら作ることができないのです。
そのような未成年者の損を防ぐために未成年を後見するのが未成年後見制度です。かつては戦争で両親を失った子に未成年後見人がつきました。現在の未成年後見人の仕事は、携帯電話の契約、パスポートの申請、学校に関することなどです。これが成人になるまで続くので10歳で始まったら8年間つき合うことになります。日本を担う子を育てる点でやりがいのある分野ですが、未成年後見は、財産を蓄えてきた高齢者後見に比べ後見報酬が高くないことが一般的です。「期間が長い割にはお金にならないせいか某公益社団法人は未成年後見に疎い」とぼやく未成年後見好きの司法書士もいます。