裁判所が決定した弁護士後見人による使い込み横領事件

家族を差し置き弁護士を後見人にしたところ、護るはずの財産を使い込むという業務上横領事件が後を絶ちません。その一部を報道をもとに照会します。

「成年後見制度の落とし穴」著者 宮内康二 発行元 株式会社青志社

成年後見の弁護士が2億3457万円着服の疑い

熊本市の49歳の男性弁護士が財産を管理していた人の口座からおよそ8000万円を引き出し流用した疑いがあることがわかりました。弁護士は流用を認め「ほとんど競馬などに使った」と話しているということです。
これは、県弁護士会が記者会見を開き明らかにしました。不正流用の疑いがもたれているのは、熊本市西区にある〇〇法律事務所の〇〇〇〇弁護士(49歳)です。県弁護士会によりますと、〇〇弁護士は、家庭裁判所の選任を受け成年後見人として管理していた二人の預金口座から、おととし複数回にわたり合わせておよそ2930万円を不正に引き出したほか、別の口座からおよそ5300万円を流用した疑いがもたれています。家庭裁判所に対し成年後見人が年1回行う報告がなく、今回の問題が発覚したということです。
弁護士会の聞き取りに対し〇〇弁護士は事実を認め「ほとんど競馬などに使ってしまった」などと話しているということです。県弁護士会の原彰宏会長は「弁護士としてあるまじき行為により市民の皆様の信頼を大きく損ない誠に遺憾です」と話していました。(2022年2月28日 NHK)
弁護士による横領事件は止むことがありません。横領ありきで行かざるを得なくなったとして、日本弁護士連合会(日弁連)は、仲間が盗ってしまったしまったお金を返すための基金「依頼者見舞金制度」は2017年4月からスタートしています。ただ、見舞額の条件は1件500万円までとなっており、弁護士に返済能力が無ければ取られたお金が戻ることはありません。この点、同じく後見人として横領してしまった社会福祉協議会は全額返済を表明しています。返金という観点からすると弁護士会より社会福祉協議会に真の誠意を感じます。

10年ほど前、家庭裁判所が送り込んできた成年後見監督人の弁護士が、「家庭裁判所から、被後見人のお金を預かるよう言われたので私によこしなさい」と親族後見人(息子さん)をだまし、お金を預けさせ、自分で使い込んでいたという事件がありました。この監督人弁護士は九州弁護士会連合会の会長で、「貝の名誉職で忙しく、弁護士個人としての売上が立たなかったから、被後見人のお金を使い込んでしまった」と釈明していました。それならば弁護士会の会長職を辞めたらよかったのではないでしょうか。
事案の詳細は後述の報道2の通りですが、そのころ福岡県が主催する成年後見制度のイベントがあり、私が基調講演をしたと思うのですが、パネルディスカッションの打ち合わせで弁護士会事務局長から、「会長による横領事件のことは言わないでほしい」とお願いされました。「言われたくなければ横領させるな」と言いましたが、組織として今後の管理を強化するという彼の意向を踏まえ発言を控えた記憶があります。しかし、熊本事件のように今でも九州エリアの弁護士後見人による横領は終わりません。「あのとき、地域の皆さまにしっかり知らせるべきだった」と反省し次回一昔前の事案を紹介します。

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