日本における障害者後見トラブル

成年後見制度は、お金持ちの高齢者のものと捉える人が多いのですが、成年後見制度の利用者の4割は65歳以下で、知的障害、精神障害、高次脳機能障害などを持つ方々が利用しています。障害者の後見をめぐる惨状は高齢者後見トラブル以上に酷く、その実態を見て、「障害を持つ子を天国に一緒に連れていきたい」と嘆く親御さんもいます。しかし、それもできないわけで、障害者に関する後見の現実に向き合い、現状を打開していくしかありません。
以下、「何とかしてほしい」と後見の杜に寄せられた実際に起こった事例を紹介します。
「成年後見制度の落とし穴」著者 宮内康二 発行元 株式会社青志社

法定後見を使うしかないと言われたが任意後見ができた兄妹

64歳になるお兄さんには知的障害、精神障害、認知症があります。92歳になったお母さんから「これからはあなたがお兄さんの面倒をみなさい」と言われた妹さんは1年ほどかけ弁護士、司法書士、社会福祉士、自治体、社会福祉協議会、地域包括支援センター、家庭裁判所などに相談したようですが、一様に「障害があるので法定後見を使うしかない」といわれたそうです。お母さんに報告すると「それじゃあ、誰が、後見人になるかわからないからダメ」と言われたようで、妹さんから後見の杜に相談がありました。
後見の杜では、「今の本人を見る」を原則としているので、妹さんと落ち合いお兄さんを伺うと任意後見でいけそうな気がしました。妹さんとのコミュニケーションが取れているからです。公証人と調整し、結果的に兄妹で任意後見契約を結ぶことができました。
知的障害、精神障害、認知症があるからといって、本人を見ず、法定後見しかないと決めつけるのは偏見以外の何物でもありません。障害イコール法定後見を決めつけ、障がいの度合いによって後見か保坂か補助かなどと知ったかぶりをして対応し、事情を精査せず事務支援を始めてしまう人を見かけますが、これは明らかにミスリードです。そのような初動ミスが法定後見ならではの人事面、費用面、取り扱い面でのトラブルへつながるのです。本人を見ず、法定後見へ誘導する人を見つけたら後見の杜までご連絡ください。
事例に戻ります。任意後見契約に加え、お兄さんと妹さんで、銀行取引や施設契約の代理代行を頼み、頼まれる財産管理委任契約も結びました。いわゆる委任状の大きい版といえますが、これにより、明日からでも、裁判所に関係なく、お兄さんに代わって妹さんが銀行などに行ってお金を下ろし、施設への支払いを済ますことができるようになりました。さらに、お母さんがお兄さん名義で貯めてきた預貯金を解約し、お母さんの口座にそのお金を戻しました。
お兄さんの世話をする前提で、お母さんの遺産のほとんどを妹さんが引き継ぐ遺言も設定しました。これで、将来的に任意後見が始まったとしても、お兄さんに財産があまり行かなくなるので、任意後見監督人の報酬を減らすことができると同時に、より多くのお金をお兄さんのために使うことができるようになりました。
以上で、お母さんからの特命を受けた妹さんの業務設定は首尾よく完了し、安心したお母さん、妹さん、妹さんのご主人、主役であるお兄さんは、みんなで温泉旅行に行くと仰っていました。
1年かけて相談して回った弁護士、司法書士、社会福祉士、自治体、社会福祉協議会、地域包括支援センター、家庭裁判所の言うことにそのまま従っていたら、今ごろ、見ず知らずの弁護士がお兄さんの後見人となり、財布を抑えて、旅行代さえ「意味がない」とでも言って払わなかったことでしょう。相談する人で人生が真逆になることもあるのです。

日本における障害者後見トラブル

成年後見制度は、お金持ちの高齢者のものと捉える人が多いのですが、成年後見制度の利用者の4割は65歳以下で、知的障害、精神障害、高次脳機能障害などを持つ方々が利用しています。障害者の後見をめぐる惨状は高齢者後見トラブル以上に酷く、その実態を見て、「障害を持つ子を天国に一緒に連れていきたい」と嘆く親御さんもいます。しかし、それもできないわけで、障害者に関する後見の現実に向き合い、現状を打開していくしかありません。
以下、「何とかしてほしい」と後見の杜に寄せられた実際に起こった事例を紹介します。
「成年後見制度の落とし穴」著者 宮内康二 発行元 株式会社青志社

県立の施設から後見を使うよう言われたお母さんの苦悩

10代の時に交通事故で重傷を負い、県立の施設に30年ほど長年にわたって入所している方がいます。ある日、施設は入居者の親御さんや兄弟姉妹に対し、「成年後見制度を使っている方の契約更新はこれまで通り3年ごとですが、成年後見制度を使っていない人は1年ごとに契約を見直すことになりました」と連絡してきました。「急になぜ?」と思ったお母さんが施設に照会すると、成年後見制度利用促進法を受けた県の方針でこうなりましたとのことだったようです。施設の回答はその通りで、このように後見業界はあの手この手で後見の利用を増やそうと躍起になっているのが実情です。
仕方なく、後見制度の手続きを取り、お母さんが後見人になりました。
数か月後、家庭裁判所から、「監督人をつけます」という通知が来ました。このタイミングで後見の杜に連絡を頂き、お母さんと本人のお姉さんと会って話をしたところ、お母さんから「県の方針は息子のためにならない。どうして、国は息子のためにならないことばかりするのですか」と嘆きました。「弁護士や司法書士に仕事を回したいためだと思います」と言ったところ、「そうでしょう、私も家族もみんなそう思っているんです」と仰っていました。
その後、お姉さんを後見人に追加しましたが、それでも監督人がつきました。
呼ばれたお母さんとお姉さんは家庭裁判所に出向き「監督人をつけてもしてもらうことはないのだから、監督人から費用を請求されても絶対に支払いません」と裁判官と書記官に強く言ってきたようです。
お姉さんは呼び出し面談のために仕事を休んでおり、家庭裁判所がいかに無駄で迷惑な監督人の選任を強行しているかを物語る事案といえます。
お姉さんは、現在も家庭裁判所と闘っています。

日本における障害者後見トラブル

成年後見制度は、お金持ちの高齢者のものと捉える人が多いのですが、成年後見制度の利用者の4割は65歳以下で、知的障害、精神障害、高次脳機能障害などを持つ方々が利用しています。障害者の後見をめぐる惨状は高齢者後見トラブル以上に酷く、その実態を見て、「障害を持つ子を天国に一緒に連れていきたい」と嘆く親御さんもいます。しかし、それもできないわけで、障害者に関する後見の現実に向き合い、現状を打開していくしかありません。
以下、「何とかしてほしい」と後見の杜に寄せられた実際に起こった事例を紹介します。

「成年後見制度の落とし穴」著者 宮内康二 発行元 株式会社青志社

後見制度が本当に必要かどうかを見極める力

仕事中に11m(3階の高さ)から転落した息子さんは高次脳機能障害になりました。労働災害の裁判のため成年後見制度を使うことになり、札幌の弁護士が後見人になりましたが、労災分野が苦手だったようで裁判が始まりませんでした。そのまま札幌にいても仕方ないので、実家の神奈川に戻ることになったそうです。後見人も神奈川の弁護士に替わりましたが、その弁護士も労災が苦手だったようで、結局、労災に強い弁護士に裁判をお願いしました。
数年が経ち、ようやく裁判は終了し、1億円近いそれなりの賠償金を獲得しましたが、労災の弁護士費用と後見の弁護士費用が二重にとられ、「こんなことなら、私が後見人になって、労災を弁護士に頼めば後見人費用はかからず済んだ」とお母さんは振り返りますがその通りです。やみくもに弁護士なら大丈夫と思い込んでいる裁判所の人選ミスで、無駄な費用を出費することもあるのです。
もっといえば、自分で労災に強い弁護士に裁判を依頼すれば済んだ可能性もあります。それで2千万円くらい後見人に取られた後見報酬を抑えることができたのです。後見制度が本当に必要かどうかを見極める力をどうか皆さん持ってください。

日本における障害者後見トラブル

成年後見制度は、お金持ちの高齢者のものと捉える人が多いのですが、成年後見制度の利用者の4割は65歳以下で、知的障害、精神障害、高次脳機能障害などを持つ方々が利用しています。障害者の後見をめぐる惨状は高齢者後見トラブル以上に酷く、その実態を見て、「障害を持つ子を天国に一緒に連れていきたい」と嘆く親御さんもいます。しかし、それもできないわけで、障害者に関する後見の現実に向き合い、現状を打開していくしかありません。
以下、「何とかしてほしい」と後見の杜に寄せられた実際に起こった事例を紹介します。
「成年後見制度の落とし穴」著者 宮内康二 発行元 株式会社青志社

長男は重度知的障害、次男は軽度精神障害のお母さん

訪問入浴のヘルパーさんが自宅で長男の入浴介護をしていました。「ガシャーン」と大きな音がしたので駆けつけると長男がお風呂場で倒れていました。その場にいたヘルパーはこともあろうに素知らぬ様子で、お母さんが救急車を呼びました。診断の結果は腰骨3本の骨折。
ヘルパーの態度がひどかったので派遣元の介護事業所へ苦情を入れると、「だったら明日からいきません」と電話をきられたそうです。ひどいと感じたお母さんは、息子さんのために入っている保険会社に電話をし、弁護士さんを紹介してもらいました。
会ってみると、「わざとケガをさせたという傷害の立証は難しいけれど、一方的にサービスを打ち切ってきたことについては勝てると思います」と理解を示してくれたので一安心したそうです。「ただ、裁判してほしいとご長男から依頼を頂かないといけないので、お母さんが後見人になってお母さんが依頼してくれれば戦えます」とのことで、2週間ほどで裁判所に出す資料を書き上げ、弁護士事務所へ持参すると、「とても良く欠けています。これならお母さんが後見人になれる!」と太鼓判を押され、お母さんは裁判所へ書類を提出しました。
裁判所での面接を経て、裁判所から来た封筒を楽しみに開けると、後見人は、お母さんではなくその弁護士になっていました。「なんで?」と思い電話すると、「私の方にも手紙が来ています。裁判所が決めたことなので仕方ないです」とそっけなく言うのです。
「これが最初におかしいと思ったことだった」とお母さんは振り返ります。
裁判所に出した資料に弁護士のことは一切書いてないのに、なぜこの人が後見人になったのか釈然としない気持ちで事務所へ行くと、2回目のおかしいに遭遇します。後見人になった弁護士から、「考えたのですが裁判は辞めましょう。お母さんの気は晴れるかも知れないけど、先の長い息子さんにはむしろ不利益になります。地元の介護事業者とは長く付き合っていかないといけないから」と言われたからです。
だったら何のために後見を使ったのかとお母さんは思いました。“もはや信用できない”と他の弁護士や自治体の福祉課に相談したものの、「できることはない」、「後見人に任せるしかない」と八方ふさがりとなり、後見の杜にご連絡を頂きました。
工夫の結果、弁護士後見人は辞任し、お母さんと長男のいとこが後見人になりました。その後、いとこに事情ができ後見人を降りることになり、先々のことを考え、地元の市民後見NPO法人を後見人として追加し、現在はお母さんとNPO法人で長男の後見をしています。後見を外すことができれば良かったのですが、長男の状態からしてそれは無理で、次善の策として後見人を替えることのサポートをした次第です。
お母さんからお手紙を頂きました。お礼に後見の杜の活動にご協力いただけるというお言葉に甘えて、後見セミナーでお話し頂いたところ、「後見はころごり、弟には後見を使いません」と断言する姿が印象的でした。
お母さんが裁判所に出した書類に書いていない弁護士がなぜ後見人になったのでしょうか。
それは、裁判所の面談で、「誰かに後見のことで相談しましたか」と聞かれたお母さんが、相談した弁護士の名前を言ったからです。裁判所は、「関わっているようだけどこの案件の後見人やる?」と弁護士に打診し、その弁護士が「やります」と言ったから後見人になったのです。この点、「裁判所が決めたことなので仕方ないです」とお母さんに説明した弁護士の説明は不適切でした。
誠意があれば、「後見人はお母さんがやって、私は裁判を引き受けることになっているのから後見人にはなれない」とオファーを断ったでしょう。

日本における障害者後見トラブル

成年後見制度は、お金持ちの高齢者のものと捉える人が多いのですが、成年後見制度の利用者の4割は65歳以下で、知的障害、精神障害、高次脳機能障害などを持つ方々が利用しています。障害者の後見をめぐる惨状は高齢者後見トラブル以上に酷く、その実態を見て、「障害を持つ子を天国に一緒に連れていきたい」と嘆く親御さんもいます。しかし、それもできないわけで、障害者に関する後見の現実に向き合い、現状を打開していくしかありません。
以下、「何とかしてほしい」と後見の杜に寄せられた実際に起こった事例を紹介します。

「成年後見制度の落とし穴」著者 宮内康二 発行元 株式会社青志社

交通事故の賠償金をめぐり裁判所に一矢報いた
20代後半のとき、バイクに乗って事故に遭ってしまった弟さんがいます。
脳挫傷の後遺症で車椅子を使用することになり言葉を発することもできなくなりました。
お姉さんから、「父が弟の保佐人をやってきた。裁判所から指導されることもなくやってきたのに、監督人をつけるか弁護士等の資格を持つ保佐人を追加するかのどちらかを2週間以内に選んで答えろという手紙が来た。父は気が動転し夜も眠れません」と電話がありました。
早速、ご自宅へ行き、主役である弟さんに話しかけると通じている感じがしたので、「わかっているんじゃないですか?」と聞くと、「そうなんです、少し打つのは遅いけど携帯でやり取りできる」というので、ラインを通じてやり取りすると完璧に話が成立しました。
「これは外せる」と確信しましたが、保佐を外すには保佐ほど悪くないという診断書を医師からとり、家庭裁判所の面接調査と鑑定医による鑑定を経なければならず、数か月程度かかるので、目先の課題である監督人と追加保佐人を回避する策を講じました。
具体的には、弟さん名義で5500万円分の年金保険に入りました。お姉さんに3600万円の現金を預け毎月10万円ずつ弟さんに渡す信託の設定をしました。保佐人であるお父さんを除く家族と親族に110万円ずつ、これまでのお礼として渡しました。これにより1億円近かった弟さん名義の預貯金が数百万円になり、その旨、裁判所にお父さん保佐人が臨時報告したところ、監督人も追加の保佐人もつかないことになりました。
そもそも、監督人や追加の保佐人がつくのは、本人名義の預貯金が例えば1000万円以上ある場合なので、そのルールを逆手に取り、本人名義の預貯金をほかの形に付け替えることで減じ、無駄な監督人や追加保佐人を回避するのです。この際、お父さんが代理権を使って、保険を買ったり、信託を設定したり、贈与すると、「権利の濫用」と家庭裁判所に言われかねません。あくまで弟さん自身がそれらの取引を行い、お父さんはそれに同意するだけのスタイルを取るのがポイントになります。本人がしたのであれば、財産処分の自由という思想があるので家庭裁判所といえども、とやかく言えなくなるからです。
そして、本丸の保佐取り消しの手続きに入りました。結論からして、保佐が外れ裁判所からサヨナラすることができたのですが、そうなるまでに1年かかりました。というのも、「補佐を取り消したいから現在の弟の状態を診てほしい」とお姉さんが主治医に伝えたところ、「えっ?僕は書けないよ。裁判所から言われたら書かなくはないけど」と、言って診断を拒否し続けたからです。
他のドクターに頼んでも、「主治医がいるから掛けない」と断られ続けました。
お姉さんはあきらめかけましたが、「主治医のところへ一緒に行くからもう少しがんばろう。弟さんは保佐ほど悪くないのだから保佐を続けることはダメなんです」と言い、筆者も主治医のところへ行きました。
事情を説明し、主治医が診断書を「書くには書く」ことになりました。
知能検査を経て、ようやくできた診断書を見てビックリ。「判断不能」という結論だったからです。これでは保佐取り消しの手続きに乗せづらいので、さらに探したところ現実を正しく反映する診断書を書いてくれるドクターと出会うことができ、その資料をもとに保佐でないことを証明し、裁判所での本人面談を経て保佐が取り消されたというわけです。
相談の電話を頂いてから21か月、保佐そのものが始まってから15年、ようやく弟さんの状態に合わせた本来の形に落ち着くことができたのです。
保佐を始めたときの診断書を見ると保佐をつける必要はありませんでした。
しかし、事故直後はパニック状態ですから保険会社に言われるがままでも仕方ないでしょう。取り消しに際しても、正当なドクターに巡り逢うまでが本当に大変でした。測定方法の問題もありますが、接見も医者次第という側面は現実にあります。

日本における障害者後見トラブル

成年後見制度は、お金持ちの高齢者のものと捉える人が多いのですが、成年後見制度の利用者の4割は65歳以下で、知的障害、精神障害、高次脳機能障害などを持つ方々が利用しています。障害者の後見をめぐる惨状は高齢者後見トラブル以上に酷く、その実態を見て、「障害を持つ子を天国に一緒に連れていきたい」と嘆く親御さんもいます。しかし、それもできないわけで、障害者に関する後見の現実に向き合い、現状を打開していくしかありません。
以下、「何とかしてほしい」と後見の杜に寄せられた実際に起こった事例を紹介します。
「成年後見制度の落とし穴」著者 宮内康二 発行元 株式会社青志社

弁護士等が後見業界に参入する本当の理由

お母さんが亡くなりお父さんが再婚しました。お姉さんは家から離れましたが中学生だった弟さんは離れることができず、後妻さんともうまくいきませんでした。弟さんは、大学時代に宅建の資格を取るなどまじめで、時にユーモラスな性格だったようですが、社会人になって間もなく精神状態が不安定になり、お父さんと大喧嘩をして精神病院に長期入院となりました。お父さんが亡くなり相続が発生しました。「弟さんに後見人をつけないと相続できない」と言われたお姉さんは仕方なく後見の手続きを取りました。
弁護士後見人による横領事件が新聞を賑わしていたころだったので、「ちゃんとやって頂きますよね?」と確認したところ、「失礼な!私は法律家よ。私と話をしたければ弁護士を通しなさい」とその弁護士後見人は怒って回答したそうです。そのような入口もあってか、病院で弟さんが急逝するまでの14年間、後見人は弟さんに一度も会いに来ませんでした。会わないで何がわかるのか、会わないで仕事ができるのかと思ったお姉さんは、弟に会わない理由を後見人に聞くと「怖いから」「会っても仕方ないから」という趣旨の発言を返して来たそうです。そんな後見で1200万円の報酬を取られました。平均して年間82万円、これを10人でもやれば年収820万円となります。弁護士等が後見業界に参入する理由はここにあるのでしょう。あんな人に弟を任せていられないと思ったお姉さんは、「自分も後見人にしてほしい」と申し立てましたが、「今の後見人に問題がないので追加の後見人は不要につきお姉さんを後見人にしません」と家庭裁判所は後見人の追加を認めませんでした。
その後、弟さんが急逝します。原因は不明ですが、唯一の身内であるお姉さんには心を開き、音楽を好み、トイレへダッシュで行ったり元気だった、私と同じ年の弟さんの訃報にびっくりしました。主役がいなくなったので後見は当然に終了しました。どのような後見をやっていたのかを調べるために14年間分の資料を裁判所から取り寄せ、お姉さんと隈なく確認したところ、「弟さんが相続していた」実家が売られていました。
なるほど、「家にある宅建の免許状を取ってきてほしい」と言われたお姉さんが後見人に、家の鍵を渡すか、一緒に行ってほしいとお願いしたのに意味不明な理由で断り続けたわけです。実家の売却に伴い自宅にあったお姉さんの私物も勝手に処分されてしまいました。後見人が実家を売った値段にも問題がありました。1700万円は安過ぎると思ったので不動産鑑定士に依頼したところ、売却当時で2850万円、今ならもっと高いという鑑定結果が出たのです。「言ってくれれば相場で買ったのに。実家を取り戻せたのに」というお姉さんの横顔はどことなく寂しそうでした。金額について元後見人に尋ねると、「そこはメッキ工場だったから」と回答がありました。「汚染調査や撤去費用を買う人負担にするという条件で売った。差額は汚染調査や撤去費用だから問題ない」とのことでしたが、そこがメッキ工場だった事実はないのです。区役所で調べてもメッキ工場としての届け出はありません。そこに住んでいた人が言うのですから間違いありません。実家を買い取った不動産屋をお姉さんと一緒に訪ねると、「メッキ工場だったかどうかは誰も調べていない。メッキ工場だろうという前提で売買が成立した、「こちらから提示した金額に後見人は二つ返事でOKした。何やら急いている様子だった」ことがわかりました。細心の注意を払い、被後見人の財産を適切に管理処分するという善管注意義務などあったものではありません。不動産屋さんに聞いたことを改めて照会しても前回と同じ回答しか返ってこなかったので、お姉さんは弁護士を通して元後見人を訴えました。判決が楽しみですが勝ったところで差額が戻ってくるだけです。
実家も、お姉さんの私物も、弟さんの写真も戻ってきません。このような人物が千代田区の福祉法律相談を今もなお担当しています。なお、弁護士後見人を訴える裁判を引き受けてくれる弁護士は少なく私の知る限り、残念ですが数名しかいません。

日本における障害者後見トラブル

成年後見制度は、お金持ちの高齢者のものと捉える人が多いのですが、成年後見制度の利用者の4割は65歳以下で、知的障害、精神障害、高次脳機能障害などを持つ方々が利用しています。障害者の後見をめぐる惨状は高齢者後見トラブル以上に酷く、その実態を見て、「障害を持つ子を天国に一緒に連れていきたい」と嘆く親御さんもいます。しかし、それもできないわけで、障害者に関する後見の現実に向き合い、現状を打開していくしかありません。
以下、「何とかしてほしい」と後見の杜に寄せられた実際に起こった事例を紹介します。
「成年後見制度の落とし穴」著者 宮内康二 発行元 株式会社青志社

ダウン症のいとこのことを弁護士に「ペットみたい」と揶揄された

Aさんはダウン症で兄弟姉妹はいません。Aさんのお母さんが亡くなり、「私が死んだら息子を頼む」と頼まれていたおじさんがAさんの後見人になりました。
Aさんの両親は、かなりの現金と家賃収入の入るアパートを2棟残してなくなりました。裕福だったわけではなく、節約に節約を重ね、Aさんがお金に困らないよう築いた遺産です。
Aさんの相続による財産額が多かったせいか、弁護士の監督人もつきました。
その監督人が家に来たとき、初めての人に愛嬌を振りまくAさんを見て、「ペットみたい」と揶揄したそうです。Aさんの人となりに興味がないのか、親戚からの情報提供もたいがいに、「アパートを見せてください」と言い、車の後部座席からアパートを眺めては、「これは売れるな」などとつぶやきながらメモを取っていたそうです。
後日、「Aさんを秋田の施設に入れてください。区役所と裁判所との話はついています」と言い出しました。これまで一緒に住んできて何の問題もないのになぜ?と思いながらも監督人がそう言うのだからそうするより他ないのだろうと考えてしまい、おじさんは、Aさんの後見人として、見たこともない遠い施設への入所手続きを済ませました。移動の日、嫌がるAさんを無理やり押し込め北へ車を走らせ、「僕も乗せて帰って!」と必死なAさんを振り切り泣く泣く帰京したそうです。
それから2年を経て、やはりおかしいと考え、後見の杜へのご相談を頂きました。いろいろ工夫し、結果的に本人は帰京、現在は実家近くの施設で穏やかに暮らしています。
一連の出来事や都市のせいもあり、おじさんが後見人を辞めるのは認められましたが、いとこが後見人になることは認められず、代わりに、ペット発言の監督人がAさんの後見人に昇格しました。これが裁判所のやり方です。
後見人になるための面接でいとこは、それまでの監督人の不適切な言動に苦情を入れました。そのせいか面接担当の調査官レポートに、「後見人候補者は専門職後見人に対し批判的である。面接を受けてもその態度は変わらず、後見人としては不適と思われる」と明記されていました。
いとこをペット呼ばわりされた相談者は弁護士会に懲戒請求しましたが不問とされました。
そのような価値観がまかり通る組織に所属する人にわが子の後見人をやってもらいたい親御さんがいるでしょうか。
家庭裁判所もペット発言の事実を知りながらその人物を後見人や監督人に多用しています。ペット発言の弁護士は某弁護士会の成年後見委員会副委員長を努め、成年後見に関する書籍を執筆し、後見監督人や成年後見初任者研修を担当しています。なるほど、こんなことがまかり通るなら、弁護士の後見の質は、下がることはあっても上がることはないでしょう。
人として、人間として、もっと思いやりのある接し方を望みます。

日本における高齢者後見トラブル

後見の社にご相談をいただき、その改善を支援した事案のなかから、高齢者についた後見人による理不尽なケースを紹介します。
すべて、本人や家族、場合によっては後見人に著者も会って確認した案件です。
高齢者と接することの多い地域包括支援センターの職印やケアマネジャーの皆様、これでも法定後見制度の利用を勧めますか。老親のお金のことでもめているご家族の皆様、これでも親に後見人をつけますか。
「成年後見制度の落とし穴」著者 宮内康二 発行元 株式会社青志社

後見人のせいで晩年を一緒に暮らせなかったご夫婦

ケアマネさんから「ご主人についた後見人のことで悩んでいる奥さまがいる」と連絡を頂きました。早速ご自宅に行くと奥様から、
「区役所に後見制度を使うよう言われた」
「区役所から良い人がいると行政書士(女性)を紹介された」
「その人が後見人になって夫を劣悪な施設に入れた」
「あの施設じゃかわいそうだから夫婦で同じホームに入りたい」
と言われました。「老人ホームを探し、後見人に退所と入所の手続きをしてもらいましょう」ということになりました。奥さまはすでに心当たりの施設があったようで翌日、夫婦で入所できるよう仮手続きをしてきました。その流れで、奥さまが後見人に連絡したところ後見人から次のファックスが来ました。
ご主人の預貯金は8700万円です。
「新しい施設の費用は月40万円、後見費用が月5万円、予備費が月5万円、合計毎月50万円になります」
「このペースで100歳まで生きるとお金が足りなくなるので、その施設の手続きは致しません」
「このことで今後連絡してこないでください」
驚くべき内容です。会って話そうと、奥さまとケアマネさんと筆者で後見人の事務所へ行きました。不在だったので置手紙をしてきたところ、後見人から依頼を受けたという弁護士から「連絡してこないでください。連絡してきたら警察を呼びます」という内容証明郵便が奥さま宛てに届きました。奥さまは「あなたは事情を知ってこんな内容を書いてよこしたのか。事情はこういうことなのですよ」と弁護士に送り返すとその後何の連絡も来ませんでした。
その間に当初の後見人は辞めていました。何たる無責任かと思いつつ、時間が流れたので、新しい弁護士後見人にご主人の退所と二人で入所する手続きをするよう求めたところ、「就任したばかりで事情がよくわからない。せかせないでください。なぜそんなに急ぐのですか」というファックスがきました。
その直後、ご主人は、施設内のコロナ感染で亡くなってしまいました。
利己的な後見人のせいで、高校時代から一緒だった不府が最期を共に暮らせなかった現実は尋常ではありません。
「なぜ急ぐのか!私たちには時間がないのです」と奥さまは新しい後見人に手紙を送っていますが、残念ながらその通りの結果となってしまいました。
「二人とも、急速に、気力、体力が衰えています」
「一緒の暮らしが遠のくたびに落胆」
「晩年少しでも快適に過ごすための自己資金の利用」
と当然の心情が書き出されています。
この気持ちを不当に踏みにじった行政書士後見人及び弁護士後見人よ、お二人に時間を返せ!

日本における高齢者後見トラブル

後見の社にご相談をいただき、その改善を支援した事案のなかから、高齢者についた後見人による理不尽なケースを紹介します。

すべて、本人や家族、場合によっては後見人に著者も会って確認した案件です。
高齢者と接することの多い地域包括支援センターの職印やケアマネジャーの皆様、これでも法定後見制度の利用を勧めますか。老親のお金のことでもめているご家族の皆様、これでも親に後見人をつけますか。
「成年後見制度の落とし穴」著者 宮内康二 発行元 株式会社青志社

空き家対策と称して狙われる独居高齢者の不動産

「近所のおばさんの姿が見えなくなった」と電話がありました。話を聞くと、「姿を消したのは大正14年生まれのMさん。Mさんは都内一等地の戸建てに独居、区の人に聞いたら後見人がついたようだ」、わかっているのはこれだけでした。
いろいろ工夫をしてMさんの後見登記(いつ、だれが、誰の後見人になったか等がわかる資料)を調べたところ、Mさんの居場所がわかったので相談者と行ってみました。そこは老人ホームで、突如現れた我々に職員はびっくりしていましたが、事情を話したところ通してくれて、お友達と会えたMさんは大喜び、矢継ぎ早に次のことを言い出しました。
「区役所の人に言われてアパートに住んでいた」
「区役所の人に、「後見人をつけます。お年寄りお一人の方は皆さんそうしていますし、そうしないといけないんです」と言われた」
「後見人の手配でここに住むようになった」
「家に帰りたいけどここから出られそうにない」
「私の家はどうなっているのかを見てきてほしい」
Mさんに会う前にご自宅を見てきましたが、すでに売りの看板が出ており、その写真を撮りましたがMさんにはとても見せられませんでした。
この事案は、いわゆる「空き家対策便乗後見」です。空き家対策と称して現に住んでいる人を追い出し、後見人をつけ、施設に入れ、家を売り飛ばすという暴挙がここ数年まかり通っています。司法書士や不動産関係者もこれに加担しています。
新しい家を建てることで家が売れ、不動産登記の仕事も発生するからです。
空き家対策後見は、比較的地価の高いところや都心のベットタウンエリアで展開されることが多く、自治体に頼まれ不当に悪い診断書を書く医者もいます。
自治体が絡む案件の場合、裁判所は被後見人となる本人と面接を省くことが多いので、自治体と裁判所によりウソの後見が創りあげられてしまうのです。
実家の親、知り合いの親、近所の一人暮らしの高齢者などが大丈夫か至急確認してみてください。

日本における高齢者後見トラブル

後見の社にご相談をいただき、その改善を支援した事案のなかから、高齢者についた後見人による理不尽なケースを紹介します。
すべて、本人や家族、場合によっては後見人に著者も会って確認した案件です。
高齢者と接することの多い地域包括支援センターの職印やケアマネジャーの皆様、これでも法定後見制度の利用を勧めますか。老親のお金のことでもめているご家族の皆様、これでも親に後見人をつけますか。
「成年後見制度の落とし穴」著者 宮内康二 発行元 株式会社青志社

自分の家で暮らすという当たり前のことを妨害された高齢女性

「母のことで」と始まる相談を受けました。その方のお母さんは、20部屋のマンションのオーナーさんです。
同じマンションに住んでいる息子さんが定年退職したことから、息子さんがマンション管理をすることになったようですが、嫁いだお姉さんがそれをよしとしませんでした。ウソの理由でお母さんを連れ出し、そのまま遠くの施設に入れました。そしてお母さんに補助人をつける手続きをとり、知らない弁護士がお母さんの補助人になりました。
数か月後、お母さんの居場所がわかったので会いに行くと、「面会できません」と施設に断られました。それが半年ほど続いたころ「後見の杜」に相談が来たのです。現場主義・本人主義の筆者は、お母さんの気持ちを聞こうと一緒に行きましたが、「病院に行っていない」とのことで会うことができませんでした。
施設職員の態度や物言いが怪しかったので、作戦を立て直し、2回目に行ったときはお母さんと息子さんの再会を果たすことができました。息子さんを見るなり両手を広げる87歳のお母さんはとても嬉しそうで、ロビーで少し話すや、「今すぐ家に帰りたいとおっしゃり、息子さんの車で帰宅しました。」施設からの連絡を受けた補助人とお姉さんが警察を呼んだようで、警察がマンションに来ましたが、自分の家に帰っただけなので、すぐに警察は撤退しました。後日、施設へ行き介護記録を見ると、補助人弁護士が、「長男が来ても会わせないこと」、「長男が会いに来たら、体調が悪い、寝ている、風呂に入っている、病院へ行ったなどと言えばよい」、「万が一、話すことになったら施設の職員が必ず同席、マンションの話になったら面会終了」と施設に指示していたことがわかりました。
その補助人はマンション管理に不慣れだったようで、格安の管理会社に委託しました。おかげで、手入れの良さで好評だったマンションの、前庭は草ぼうぼう、1階のエントランスフロアの電気はついたり消えたりとお化け屋敷のようになってしまいました。
部屋を借りている人からエアコンの修繕依頼があっても対応が遅く、長年転出などなかったのに3家族が「とても残念だけど」と出て行ってしまいました。
補助人のせいで家賃収入が減ってしまったのです。
自分の不出来をオーナーに知られたくがないための「会わせない後見」、そのために施設に迷惑をかけた補助人弁護士の陰湿性に壁易します。救いだったのは、老人ホームから脱出できたお母さんが自分の部屋で晩年を暮らすことができたことで、「それだけは本当に良かった」とお母さんと長男家族が喜んでくれたことです。子供同士の軋轢があるとはいえ、自分の家で暮らすという当たり前が、悪質な補助人弁護士により妨害されたのです。